読書: 闘病記、百歳日記@病院2024年02月19日 17:28

読書: 闘病記,百歳日記@病院

 入院中は、時間があると思って本を持ってきた。友に教えてもらった乳がんの闘病記「くもをさがす」西加奈子と、「最期のアトリエ日記」野見山暁治(102歳逝去)である。

 二つともエッセイなので、読みやすかった。

 闘病記はカナダという異文化の中でよくやるなあと思った。自分だったらもたんやろうな。女性の社交力の強さもあるのかなあ。

 ガンなので告知された時の血が引く感じや、不安感などは同じである。ガンに向き合わざるをえない自分と、客観的に見ている自分がいて、それがだんだん一体化したように書いてた。なるほどよくみている、共感した。

 野見山画伯のエッセイはすごい。90過ぎの日記である。ほとんどが、老いへの抵抗である。肉体の老化は確実に進み、機能は弱くなっていくが、頭はそれほどでも無いようである。頑健な体質だからか、たまたまなのか。

 それに、たくさんの人のお世話になって生活が成り立っているので、まわりの人たちへの気遣いもすごい。

 テレビも見ているので、コロナや、ウクライナなどへの考えは自分と何ら変わらない。とくに、社会や政治に対するなげきは、まったく同感である。

 最期の貴重な記録である。いくつか、気になった百歳の言葉をあげよう。時系列は前後するかも知れない。


  •  コロナ禍、黒人騒動と世界騒然。息がつまる。ぼくが生きているこの世情、今までと何ら変わるところがない。
  •  コロナウイルスの現状、安倍首相の子供じみた答弁。
  •  オリンピックの原稿で。新聞に載った文章を、政府が利用するような事はないだろう。今の政府はうす汚い。こっそりとやるか、打ち出して言葉を利用するか。一般庶民の言葉まで掬いあげそうな姑息さだ。
  •  百歳になって愚痴っても始まらん。
  •  祭日、このところテレビのひどいこと。日本は滅びるんじゃないかと危ぶむほど低俗を極めている。コロナのせいでは済まされん。
  •  財務局職員の自殺、妻の訴訟、ずっと気になっている。まさか知らんぷりじゃないだろう、国は。いや国は公明正大にやっていけるほど、単純なものではない、と言うか。
  •  コロナ禍でのオリンピック、無謀だよ、今の日本の指導者、いったい何を考えているのか。
  •  日本人は天候の具合まで自分の責任のように謝る。
  •  ぼくが肌身に感じた戦争を伝えたい。
  •  あえて言いたい、日本人は戦争に敗れたから嫌だと叫んでいるだけだ。負け方が下手くそ。負けないものと思い込んでいたらしい。
  •  新聞記事、森友決裁文書改ざん訴訟、財務局職員の自殺経過、ぼくはこんな国に住んでいるのか。
  •  わかっている。この歳になると、いつだって体のどこかが悲鳴をあげる。そんなに気にしなくていい。
  •  色んなものに興味が薄らぐ。薄らぐとあまり意味のないものに思えてくる。オリンピック、絵を描くことにも。
  •  ロシア、ウクライナに国家規模の強盗殺戮。理性に培われた現代に、こんな理不尽が、まかり通るのか。
  •  映像のぼくは自分で感じるより、ずっと老人だ。わざわざ、素っとぼけなくても充分にできあがっている。
  •  ロシアのプーチンの、あの冷たい顔が、ちらついていかん。一人の精神異常者の横暴で、地球上の全人間が不幸にさいなまれる。大袈裟に叫んでいるのではない。一瞬にして、それが可能な兵器を20世紀は手に入れたのだ。
  •  権力は生物のすべての、最高の憧れか。それを手にした途端、気が狂う。
  •  楽しく観せようとするテレビの、みるに堪えぬしらじらしさ。誰が歓んでいるのか。それともぼくが、今の人間のお笑いから、ハミ出しているのか。ずっと棲んでいたいと願うこの世であって欲しい。
  •  イギリス女王の死の報道、お祭りのよう。日本の国葬、安倍晋三氏の問題、どうする茶番劇。
  •  テレビは連日サッカーを追いかけて、いくら何でもこの国はスポーツしかやっていないのか。それにまつわる悪徳業者、政治家。時代がどう移り変わってもこのザマか。
  •  妻たち。彼女たちの寄せた愛情を、ただぬくぬくと享受している。二人とも同じようにぼくの許を去っていったが、ぼくが消した、という罪悪感が、苛みはじめた。妻たちに限らない。たしょうの愛情をぼくに抱いたひとたちに、ぼくは傲慢だった。
  •  ただひたすら自分だけが可愛い。そんな男に結婚の資格はなかったんだ。
  •  自分の体のことを人に任せているせいか、おのれの人生の、外っ側にいるようだ。
  •  周辺の人をそれなり犠牲にして、生きる資格が自分にあるのか。その思いは、日が経つにつれて、ぼくにのしかかる。この思いに早く決着をつけたい。日を重ねていると、判断が鈍くなる。
  •  今までにないこと。いきなりお尻から汚物。なんという猛々しさ。やはり老人になるのは恐ろしい。
  •  広島サミット、ウクライナ大統領くる。日本の親方、ずっと口を少し開き、白い歯を覗かせている。ここはきつく唇は閉ざした方がいい。日本人の親しみというか、社交顔だけど、世界に通用しない。


 あげ出したら切りがないのでこれぐらいにしますが、いきどおりは今の自分と変わらないようで、一安心しました。

                 @病室



コメント

_ やっちー ― 2024年02月26日 11:02

「くもをさがす」は2/1に図書館に申込んだが、現在1083人待ちになっている。エライ人気だ、いつになる事やら。
「最後のアトリエ日記」面白そう、本日申込んだ。一人待ちなので近々連絡がきそうだ。

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