目から鱗 ショックドクトリン2023年06月30日 19:20

 目から鱗 ショック・ドクトリン


 NHKの100de名著で「ショック・ドクトリン」をやっていた。著者はジャーナリストのナオミ・クラインである。ショックドクトリンの言葉の意味は知らなかったが、見ているうちに気になっていたキーワードがどんどん出てくる。フリードマン、シカゴボーイズ、新自由主義、規制緩和、民営化などである。

 水道の民営化に関心があったので、昨年、関連のブログを2回書いた。もう一度この問題を思い出してほしい。


http://aaji.asablo.jp/blog/2022/02/  http://aaji.asablo.jp/blog/2022/07/  )


 この本は実際にはまだ読んでいない。テレビ番組の域を出ないが、新自由主義者が世界中の、特に政治を戦略的に動かし、さまざまな問題を起こしてきたことが良くわかる。

 10年以上前の会社員のときにMBAを持つ知り合いに、フリードマンや新自由主義についてたずねた。いきなり写真の本を読めである。さすがに読めないのでレクチャーしてもらった。ストーリーは番組で言っているのと変わらなかった気がする。


 戦前から戦後1990年ぐらいの経済学と政治について述べられている。

 日本では、1990年代半ばに米国から水道の規制緩和の要求があり、その後、同時に世界では民営化が進み、国内では2018年にコンセッションを可能とすべく水道法が改正された。

 大阪では維新と新自由主義者が組んでやりたい放題をやった。民営化で誰が利するのか市民は知らない。さらに厚労省もその名残の予算を「新たな官民連携」と称してPPP/PFIを推進すべく予算をつけている。

 どんな政策、思想、主義主張にもメリットとデメリットがある。新自由主義も出現して半世紀になる。その間の経済発展に貢献した。一方で、市場原理主義は社会全体に格差の生む仕組みをねづかせた。元には戻らないので、新たな経済的な仕組みへと変貌していくのだろうと思われる。

 社会インフラに競争原理を持ち込んで、メリットが出るのはどんなインフラだろうか。代替手段がある場合は競争は成り立つかもしれない。

 日本の水道のように井戸水の時代から一世紀以上かかって飲める水を蛇口から出せるようにした。普及率は98%である。世界に類を見ない飲料水ネットワークを築いている。

 飲料水は蛇口ではなく、ボトルで飲む習慣の国で起こった水道の民営化を、格差が広がったこの国に持ち込めば悲惨な結果になるに違いない。

 公共サービスの仕組みを壊せば、元には戻らない。赤字の水道事業を民営化したって黒字になるわけがない。あの手この手の水メジャーの戦略にどう対峙するか知恵を絞らねばならない。

 ショックドクトリンの後にできたのは、国の崩壊と格差拡大である。ソ連は崩壊し、ロシアの独裁者は戦争をやっている。元祖の米国は軍需産業でホクホクである。

 国際社会で日本の選択肢は多くない。水道の安全保障についても、ローマ字の政策はリスクをともなう。まずは、世界中に仕組まれたこの考え方の功罪を、市民に広く知らせることが大事だと思う。

 NHKも深くはつっこめない。番組は、この種の問題で、犯人探しをやっても仕方がない。せいぜいこんなことがあったよで終わった。

 考えれば考えるほど無力感に苛まれる。高齢者は身体にこたえる。ぼちぼちやめよう・・・